第2話・地の虎王 その1 |
ガイ・ランダー「ふぅっ…」 思わずため息を吐いたガイ・ランダー=道原大地の目の前では、先ほど倒した敵ロボットの残骸が転がり、そこからは煙が上がっている。敵の兵士たちは何とか全員逃げおおせたようである。 本当に俺が倒したのか…とついさっきの戦闘を思わず疑問に思ってしまっていた。 それに自分の体…まるで昔見たアニメに出てくるようなロボットになってしまっている。 更にこの大きさであんなに動き回れる能力…これが精霊魔法なのか? もしかしたら他の皆もそんな事考えてるのか?いや、むしろ皆無事なのだろうか…探しに行かねば…と大地の頭の中には疑問と不安が飛び交っていた。 そんな頭の中へ、地の精霊が話し掛けてきた。 地の精霊「とりあえず合体を解除したらどうだ?」 ガイ・ランダー「ああ…ってどうすれば?」 地の精霊「私を感じながら『吸収解除』と唱えればよい。」 簡単なもんだな…と呟いた大地は取り敢えず試してみる事にした。 ガイ・ランダー「分かった…『吸収解除!!』」 ガイ・ランダーの体から緑色の光が一瞬フラッシュし、その場に大地が降り立つ形になった。 大地「…」 自分の体を改めて見回し、元に戻っている事を確認する。そして辺りを見回す。木々の間や、彼らが乗ってきた車(のようなもの)に隠れるようにしていた人々がこちらを見ている。どの眼も複雑な色を浮かべ、一応こちらをすぐに攻撃できるような態勢をとっている。火や地の力を感じられる。警戒されているようだ。まぁ無理も無いか…。 そんな中、唯一この場に居る女性〜自分と同世代に見える少女〜は自らの胸に掛かるブローチと、敵ロボットを倒した緑色のロボットの胸飾りを見比べ、ある確信のようなものを感じていた。間違いない。あの勇者達がついに現れた…現れてしまった、と。 大地「あの…」 揃いの軍服らしきものを着た人々のうち、見た感じリーダーらしき人物に声を掛けようとすると、 リーダーらしき人物「動くな!」 と一声強い調子で静止を求めてきた。それに対し、大地は通じるかどうか分からないが、取り敢えず敵意が無い事を示すつもりで両手を上げた。 リーダーらしき人物「そのまま…改める。」 彼は2〜3人の兵士に目で合図した。 そこへ女性が毅然と且つ諭すように話し掛ける。 女性「お止めなさい…」 リーダーらしき人物「!!…王女様!」 王女「ハンク、そこまでする事ありません。」 ハンク「しかし…」 ハンクと呼ばれた男を遮るように大地の前に立ち、やや微笑みながら 王女「失礼致しました。我々はドラゴニア王国の者…。私は国王レオン=ドラゴニールの娘、セレナ=ドラゴニールと申します。この者達は近衛部隊及びその部隊長、ハンク=シャインブルムです。」 大地「俺は、いや、私は道原 大地…日本という国から来た。」 と告げた後、軽く会釈した大地は頭を上げた時に王女セレナと一瞬目が合ったため、思わず逸らしてしまった。しかしセレナは何ともなく、大地の反応にほんの一寸驚いた様子で セレナ「?…どうなさいました?」 大地「いえ、失礼。あ、日本と言っても分からないか。…俺はある人物に頼まれてこの世界に来た。先程のロボットも、その人物から託されたものだ。」 セレナ「…頼まれてこの世界に…託された…そうでしたか。ところで、もしかして…貴方は勇者ガイアン…ですね?」 大地「よくご存知で。どうやらそうらしい…俺はその『勇者ガイアン』として地の精霊と契約したのだが、『以前に』契約した人物もそう名乗ったらしい、と精霊から聞いた。」 セレナ「やはり…本当に現れたのですね…」 大地「その様子だと、あまり良くは無い様だな。まぁ、この俺でも無理も無いような気がしているが。」 二人の会話を遮るように部隊長ハンクが話し掛ける。 ハンク「王女様、そろそろ王宮に戻りませぬと、国王陛下が心配されます。」 セレナ「ええ、そうですね。それに勇者ガイアンのことももっと知りたいですし…それに何よりも我々を助けていただいたお礼をせねばなりませぬ。ハンク、大地殿を王宮にお招きしましょう。」 ハンク「しかし、まだ本当に『勇者ガイアン』かどうか確証が…」 セレナ「いえ、間違いないと思います。お母様の言われた通りですから。」 ハンク「…分かりました。王女様がそう仰られるなら。」 セレナ「それでは…大地殿、私の車にお乗りください。」 ハンク「王女様!それはなりませぬ!!彼にはあの車に乗っていただく。」 とハンクが指差したのは同型の車(のようなもの)4台の内、後から2台目である。 大地「…まぁ、どの乗り物でも構わないが…。」 ハンクは兵士の内二人を指名し、大地に付くように命じた。 兵士「大地殿、ご案内いたします。」 大地「ああ、宜しく。」 大地は兵士二人と共にその車に乗り込み、王女セレナと部隊長ハンクは一番前と2番目の車の間に在るやや大きめの車に乗り込んだ。 ハンク「出発!!」 合計5台の車は王宮に向けて走り出した。 大地は窓からの景色をぼーっと眺めていた。 大地に付いた兵士二人は、あの圧倒的な地の精霊魔法を持つ男の傍にいるせいか、やや緊張気味な様子を見せていた。 部隊長ハンクも緊張していた。まだ正体が理解出来兼ねている男・道原大地への警戒に似た気持ちと、その大地に(と言うよりは勇者ガイアンに)興味を持っている王女セレナの好奇心へのやや呆れた気持ちがまざってしまっているからである。 そして王女セレナは… やや不満顔でひとりごちた。 セレナ「お聞きしたい事が沢山あるのに…。」
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