第1話・その4
?「8人の勇者よ、力を貸して欲しい…」 その声に8人はふと我に返って目を開けた。 8人の周囲には、オーロラのように8色の光が輝く空間が広がっていた。そして目の前には…白色の服を着た青年男性が二人(うち一人は控えるように)立っていた。 大地は、背中まで髪を伸ばしている手前の人物に声を掛けた。 大地「失礼ですが、あなた方は?」 ?「私の名前はユリエル。ユリエル=ティワーズ=セラフィム。数多の天上界を統括している。」 炎也「天上か何だか知らねーが、俺たちに何しやがった!!」 美雷「炎也、落ち着いて!…あの、ユリエルさん。私達はどうなったのですか?」 ユリエル「君達の力を借りたいがために、少し強引ではあったがこの空間に召喚した。」 力を?8人は顔を見合わせた。俺たちの?何のどんな力?一寸困惑しているようだ。 そのせいか、疾風が疑問と関係の無い質問をユリエルにぶつけた。 疾風「この空間、まるで現実味が無いのだが?」 ユリエル「ある連中に気付かれないように作り上げた空間なのだ。君たちの世界で”亜空間”といったところか。」 ??「ユリエル様、時間がありませぬ。すぐにでも説明と契約を…。」 ユリエル「ああ、済まぬ。ではラクフィルよ、あとは頼む。」 ラクフィルと呼ばれた男はユリエルの前に出て話し始めた。 ラクフィル「私はラクフィル=ドゥルガー=アークス。ユリエル様の命にて惑星”ティガー”の天上界を支配している。」 大地は惑星”ティガー”という、聞きなれない言葉に質問しようとしたが、遮るように話は続いた。 ラクフィル「惑星”ティガー”はお前達の惑星”地球”と異なり、天上界・地上界・地底界の3界に分かれているが、そのうちの地底界が3界全ての支配を企んでいるのだ。」 炎也「それが俺たちに関係あるのかよ!」 美雷「私達を召喚した理由を聞かせてください。」 逆に遮るように、炎也が文句を言い、美雷が尋ねる。 ラクフィル「力が拮抗している3界全てを制圧する為に、地底界の或る一派が古の戦いでも活躍した科学力を欲していた。そして、伝承的存在になっていた科学文明の、即ちお前達の世界を探すうち、何故かその世界への接点を発見したのだ。一派の代表であるマルファスは、目的に相応しい或る男を探し出した。その男は”科学”に”精霊魔法”を利用して”より強力な力”を得ようとしていたらしいが、マルファスはそれに目をつけたのだ。」 その男?まさか渡辺教授が利用されているのか?8人ともふとそんな考えが浮かんだ。 ラクフィル「マルファスは科学力の提供をその男に要請した。勿論その見返りとして、精霊魔法の提供を約束した。」 大地「何だって?!科学力の提供?」 疾風「科学力はともかく、精霊魔法はどう提供するのだ?」 ラクフィル「地上界にある”勇者の石”を与える事にしたのだ。それは突出した精霊魔法力を持たない地上界人の力の源であり、日常生活にも利用されている物なのだが、その男の協力にて科学力を身に付けた地底界なら、地上界から”勇者の石”を奪取する事など造作も無い。勿論、その程度なら我等天上界も”吸収合体”で十二分に対抗できるのだが、奴らが”勇者の石”まで手に入れたら、我等でも如何する事も出来ないだろう。その為にも先ず”勇者の石”を守らねばならぬ。だから君たちの力を貸して欲しいのだ。」 大地「力を貸して、と言われても…何故俺達が?」 ラクフィル「地底界に召喚された男を助け出して欲しいのだ。同じ地球人同士なら我々よりは説得にも応じやすいだろう。」 大地「それはそうかもしれませんが…やはりあなた方の世界の事なんですから、あなた方で何とかすべきではないのですか?」 ラクフィル「それだけでは無い。あの男は”勇者の石”を持ち帰って地球を支配するつもりらしい。”勇者の石”と科学力ならそんな事はたやすい事だ。だから尚更君らには、地球人の代表としてそれを止めて欲しいのだ。」 渡辺教授の精霊魔法への関心はそんな野心の為だった事を知った大地は驚きを隠せなかった。そんなことされたら地球が滅茶苦茶に成ってしまう!止めなければ!しかし…。 炎也「俺たちにそんな力があるわけねーだろ!」 ラクフィル「いや、有る。調べさせてもらった。8色の光でな。」 あの光が!8人は驚きそして昨日の出来事を思い出していた。 ラクフィル「地底界に対抗するための力”吸収合体”には、精霊と融合した人間が必要なのだ。その為にあの光で8つの精霊と融合できる人間を探していたのだ。地上界と地球でな。その結果、白羽の矢が立ったのがお前たち8人なのだ。」 美雷「それにしても…何故地球でも探す必要が有るのか、理解できない…。」 それは…とラクフィルが喋ろうとしたその時、 ???「おしゃべりが長すぎたようだな、天上界の諸君。」 何処からとも無く声が響く。しまったという表情を見せながら叫んだ。 ユリエル「地底界?!気付きおったか!!」 ???「お前らの企みは失敗だ!!!」 いきなり姿を現したその人物〜地底界の連中らしい〜は、部下達に一斉攻撃を命令した。 ???「やつら勇者候補を狙え!!!」 ユリエルとラクフィルは大地達8人を庇おうとしたが、大地達とユリエルの間に連中が現れたため、直接助けることが出来そうに無かった。だから… ユリエル「止むを得ぬ!!」 ユリエルは8人を三度8色の光に包み、惑星”ティガー”へ次元跳躍させようとした。しかし、 ???「そうはさせるか!!」 突如振り向いてユリエルへ攻撃を仕掛けたのである。咄嗟にラクフィルがユリエルを救うべく彼に触れ、天上界へ次元跳躍を行った。そのため、8人の次元跳躍が乱れた!! ユリエル「”勇者の石”を、そして我が妹を…。」 次元跳躍させられた大地の耳にユリエルの遠ざかる声が聞こえたが、大地も急激な次元跳躍の影響か、意識が遠ざかっていった…。
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