第1話・その3

 

 翌朝、土曜日午前10時、大石山高校校門前。大地達6人は観崎大石山神社へと向かった。6人とも何処かしら思いつめたような表情をしていた。そんな中、最初に口を開いたのは大地であった。

大地「あの光を受けてから、何だか足裏の感触がおかしいんだ。」

美雷「どんな感触なの?」

大地「足を踏み出すたびに、足裏からまるでエネルギーが流れ込んでくるみたいなんだ。」

炎也「よくわかんねぇ説明だな。」

大地「上手く説明できないけど…体中に気力がみなぎってくるような…。」

炎也「ふーん。」

美雷「やっぱり具体性に欠けるわね。みんなは?分かる?それとも何か感じた?」

水樹「あの…。」

やや遠慮がちに説明を始めた。

水樹「昨日、家に帰って手を洗ったときや風呂に入ったときに感じたんですけど、水の感触が何時もと違ったのです。」

美雷「エネルギーが流れ込んできたとか?」

炎也「気力がみなぎって来たんじゃねーだろーな?」

水樹「えっと、実は…大地の言う通りなんです。だから夜、寝ようとしたのに何だか軽い興奮状態になって…なかなか寝付けなかったのです。おかげで一寸眠くて…ふわぁ〜…」

炎也「まさか、疾風や音彦も?」

疾風「ああ、帰宅途中に体に感じる風がな。」

音彦「ワイもや。あのあと、心配して声掛けてくれた美咲ちゃんの声、ちょっと違うたな…甘うて切ない…ギャッ!」

疾風が音彦の首根っこを引っ捕まえたのである。

疾風「こんな時に誰も君のしょーもない話は聞きたくない。」

音彦「冗談やて、疾風…。ホンマは大地とおんなじ様なもんや。」

大地「みんな少しずつ違うようだなぁ。」

炎也「ちぇっ、俺たちだけ何だか除けもんかよ。」

美雷「それはそうね。でも…何を意味するのかしらね?」

大地「それも調べる対象になったのだけは間違いないね。」

そんな話をしながらやがて6人は神社の鳥居に到着した。

大地「さて、仰木さんに挨拶しなければ。」

仰木さん〜観崎大石山神社の宮司である〜に探索の許可を貰うべく社務所に行こうとした大地の前に、二人の高校生が不意に現れた。

大地は一瞬驚いたような表情と態度を見せたが、二人の顔を見て直ぐに思い出した。

大地「日向!それに御影!何で君たちがここに?」

日向と御影〜阿部日向(あべ ひゅうが)と阿部御影(あべ みかげ)…双子であり、クラスメートである〜が目の前に立っていたのである。

二人は殆ど表情を変えずに、

日向「そうか、残りの6人はお前達だったのか…。」

御影「来た理由は判っている…これから案内する。」

 

大地は勿論、他の5人も阿部兄弟の行動は不可解に思えた。だから幾つか質問を投げかけた。

大地「何処へ向かうんだ?ここの雑木林にも、あの古寺のように忘れられたような物があるのかい?」

日向「ああ、そうだ。仰木さんに昨日聞いた。そこへ向かう。」

炎也「なんでそこへ向かうんだ!まさか、お前ら何かたくらんでんじゃねーだろうな!」

御影「昨日、謎の光が学校に飛んで来たとき、俺達は屋上に居た。あの光がこの雑木林の中から来たってのはこの目で見た。そして俺は黒の、日向は白の光を浴びた。」

日向「俺達もあの失踪事件の事は知ってるからな。だから仰木さんに何があるのかを確認したのだ。」

疾風「で、何があるのだ?」

日向「祠さ…綻び掛けたやつがな。」

炎也「へぇー、やっぱ怪しいな、そりゃ。」

美雷「それは調べる価値ありそうね。」

大地「はは、確かに。それにしても日向、仰木さんとは顔見知りなのかい?何だかあっさりと、しかも挨拶せずにその祠に向かってるけど…大丈夫?」

日向「それは心配ない。俺たちの親父と仰木さんは知り合いだ。それに、ここは雑木林といっても相当深い。手付かずの部分も多い。だから俺たちの修行にももってこいなのだ。」

大地「あ、ここもその一つだったっけ?」

炎也「なんだよ、修行って。」

疾風「確か二人は忍者の末裔だったな。未だに修行してるってのがアナクロな気もするが…。まぁ、おかげで調べるのは楽できるが。」

炎也「そりゃま、そうだな。丁度いい案内人だ。」

水樹「あのぅ、日向さんは変な感触は有りませんでした?」

日向「変な感触か…。確かに夜は御影が、朝方は俺の能力が増幅されたようだったが…すぐに慣れたぞ。それがどうかしたのか?」

水樹「此処に居るみんなも大なり小なり有ったから…。」

御影「それで、余計に此処へ来たくなったって訳か。」

水樹「そんなもんです。」

 

一向は目的の祠に到着した。確かに綻び掛けており、直ぐにでも崩れそうに見えた。こんなところからあんな光が飛び出るなんて、想像も出来ないくらいだ。しかし…。

炎也「こんなの触っても大丈夫なのかよ…壊したら怒られるんじゃねーの?」

美雷「ここまで来て余計な事言わない!一蓮托生よ!」

炎也「へいへい…。」

大地「それじゃ、調べてみるか。」

写真を何枚か撮っていた大地はカメラをカバンに仕舞い、軍手をはめた。

そして、祠に触れようとしたその時…

8人「うわぁっ!!!!!!!!!」

再び8色の光が祠から飛び出し、8人はまともにそれを浴びた。思わず目を伏せる8人。

 

…目を開けた8人が見たのは…。

 


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