オリジナルブレイブサーガSS
連作SS「レミィ研究室調査レポート」
ケース2:西山音彦の場合


…パタンっ。
大地「さてと。」

とある日の午後にて。戦艦ラスガ内・道原大地の自室。読み終えた本を閉じた彼は立ち上がり廊下に出た。
その本を親友である西山音彦に返すために。


音彦の部屋の前に立ち、呼び鈴を鳴らす。

ピンポ〜ン♪

音彦「だれ〜?」
大地「音彦〜居るかい?」
音彦「ああ、大地か。…えーよ、入ってや。」

ぷしゅ〜っという音と共にドアが開く。

大地「これ返しに来たんだけど…?」

本をかざしながら部屋に足を踏み入れた大地が見たのは、右耳に掌を当ててその方向へ頭を振っている音彦の姿だった。

大地「何やってんの?」
音彦「見たら分かるやろ。耳ん中がごろごろ〜って鳴ったんや。気色悪うて…はよ取りたい!」
大地「それならそんなことしなくても、耳掻きを使えばいいじゃないか。」
音彦「あれへんからしゃーないやろ!」
大地「医務室にでもあるだろ。借りてきてやるよ。」

本を手渡すと踵を返して大地は部屋を出て行った。

音彦「ついでにセレナさんも呼んできてな!」
大声で叫んで追加注文を(ちゃっかりと)行っておく…ドアが閉まりきる前に。



本棚に本を戻しながら思わず頬が緩んでいく音彦。
音彦「さ〜て♪〜セっレナさんの〜ひっざまっくら〜♪」
妄想が膨らみ小躍りする。



大地「ただいま〜。借りてきたよ〜。」

5分ほどでライト付きの耳掻きを手に戻ってきた。

音彦「おお!スマンな!…ってあれ?セレナさんは?」
大地「え?王女様がどうかしたの?」
音彦「呼んできてって頼んだやろ!聞こえへんかったんか!!!!!」
大地「ごめん。耳掻きを取ってくることばかり考えてたから…何か叫んでたのは気付いたけど…。」
音彦「まぁ、ええわ。自分で探すさかい。…とにかくおおきにな。」

セレナを探しに行こうとする音彦に大地が「なんで王女様と耳掻きが関係有るのかな?」と思いながら、
一言〜音彦にとってはとてつもなく重たい〜を投げかける。

大地「王女様なら女性陣と連れ立って買い物に行ったよ。」
音彦「な〜に〜〜〜〜〜〜!! ちぇっ、折角セレナさんに掻いてもらおうかと思うとったのに…。」
大地「は?それくらい自分でやれよ。」
音彦「ワイは自分で自分の取るんは苦手なんや!!」
大地「やれやれ、仕方無い。俺がやってやるよ。」
音彦「何でお前が!」
大地「気色悪いってさっき言ってたろ。」
音彦「そらそうやけど…。」
大地「さあ座った座った!」

大地は音彦を押すように椅子に座らせると、自分は小さな丸椅子を持って音彦の右側に寄る。

音彦「ええて!後でセレナさんに…」
大地「暴れたら怪我するだろ!大人しく座ってろ!」

珍しく強い口調に出た大地に音彦はひるんだ。その隙に…

大地「ど〜れ…ああ、これかな?」

音彦の耳たぶをつまみながら耳掻きを入れると、すぐに原因を探し出した。

大地「ちゃんと掃除しろよ。細かいのも結構あるぞ。」

そう言いながら掻きだす。

音彦「(うう…何が悲しゅ〜て男に…。)」
思わず呟く。

大地「何か言ったか?」
音彦「何も…。」
憮然とした表情と口調で相槌を打つ。


大地「さて、こんなもんかな? 音彦、ちょっと耳を振ってみて。」

ふるふるふる。

音彦「何も鳴らん。オッケーや。おおきに。」
大地「どういたしまして。…あ、そうだ。ついでに左耳も。」
音彦「もうええっちゅうねん!!!」

叫びながら音彦は走って部屋から飛び出して行った。

大地「おーい…」

今一理解できない表情でおいてけぼりにされた大地であった。


おしまい(^^;)

 

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